このレビューはネタバレを含みます▼
たまたまSNSでこの漫画を見付け、試し読みしてから購入しました。個人的にメリバがあまり得意ではないので、不穏なタイトルとそれに反し柔らかい色使いの表紙にビビりまくり、レビューを見漁った後に心して読みました、が、しばらく放心状態になる凄まじい物語でした。葵兄ちゃんがあまりにも器用に立ち回り可愛らしく笑うから、ファンタジーなのかと錯覚しそうになりますが、物語が進むにつれ着実に"最期"へ向かっていることを嫌でも感じさせてきます。福太にとってはなんでも出来るお兄ちゃんでも、ちいさな中学生の男の子だった葵くんにとってあの過去はあまりにも苦しくて惨いものだったと思うし、ああいう大人は実際存在するのだということにゾッとしました。葵兄ちゃんは福太の行為が取り返しのつかないことだと分かっていても、どんな姿になっていようとも、福太に見付けてもらえて嬉しかったでしょうね。彼らが別の方法で幸せになる術はなかったのか、などと考えましたが、ふたりが出会っている時点で幸せな結末など用意されていなかったのかもしれません。葵くんが愛されていたなら、泣いていた福太に声をかけることもきっと無かったのだから。
きみ先生の「さよならアルファ」を拝見した際に、このひとは読者の感情を煽る泣き顔を描くのが上手な方なんだなあと勝手ながらに思っていたのですが、この作品もそれが存分に感じられました。フラッシュバックするふたりの想い出、最期の表情、雪景色、クッキーの缶箱、全てがトラウマになりそうです。最高に悲しくて切なくて愛おしい物語をありがとうございました。