natsuさんがつけた評価
好きな作家様の一人、雨瀬先生の描く終戦直後の物語。
家族全員を失った戦災孤児・兼吉と、彼が出会った謎...(続きを見る)
好きな作家様の一人、雨瀬先生の描く終戦直後の物語。
家族全員を失った戦災孤児・兼吉と、彼が出会った謎の青年・金井田がお話の中心人物です。
この先生が紡ぐ泥臭いながらも美しいヒューマンドラマは、いつも心に突き刺さる。別名義の作品を拝読した時も、狂おしいほどの衝撃とともに、人生観が180度変わるほどの影響を受けました。
ジットリと仄暗く、重くて辛く、しかしそれでも必死に生きようともがく人々の群像劇。独特の絵柄も相まって、息遣いさえ聞こえてきそう。
孤児、復員兵、ヤクザ、パンパン…。たとえ世間的に悪と誹られるような行為でも、食べていくための手段は人それぞれ。作品の舞台は戦後半年にも満たない頃、まだまだ戦中の痛手を引きずった世の中です。
そんな時代をひたすら逞しく我武者羅に生きる兼吉、そして彼を取りまく人々。自分だったらすぐ野垂れ死んでいるだろうな…。
そう考えると、やはり戦中戦後を生き抜いてきた祖父母を尊敬してしまう。いや祖父母だけでなく、当時を生きた全ての人々が純粋に凄いと私は思います。
もし平和ボケした現代人があの頃にタイムスリップしたとしたら、生き抜くことが出来るのはほんの一握りなんじゃないかと。戦争を経験した先人たちには本当に頭が上がりません。
色々と考えさせられる、実に深く心を抉ってくる物語でした。
それと別名義での新作も、いつか出していただけたら嬉しいな…。(閉じる)
>全てのレビュー(投稿:20件)