「耐えていればいつか報われるなんて、そんな希望、最初からなかった」幼少の頃に狐を助けたことから、狐の妖になつかれた娘・かや。しかしそれは、かやのほかには誰にも見えないことから、家族や村人に気味悪がられていた。干ばつで不作が続くある日、かやの住む村では、土地神・稲荷明神へ祈る雨乞いの儀式を決行することに。村の厄介払いとして生贄に選ばれたかや、燃え盛る火の中に入るよう、うながされたその時、狐妖が呼んだのは……?私のことを誰も知らない場所で――。虐げられながらも密かに幸せを夢見ながら耐え忍ぶ娘を、土地神狐の深い愛が神隠す物語。