仕事一筋で恋愛経験の乏しいOLが貯金をはたいて旅行に訪れたヴェネチアで、素敵なイタリア男性と出会って恋に落ちる。このプロットは名画「旅情(1955年製作、原題:Summertime)」とそっくりですね。映画史上最高の女優の一人とされるキャサリン・ヘップバーンと、ラテンラヴァーとして右に出る者のない男優ロッサノ・ブラッツィが共演した傑作と比較するのは誠に申し訳ないのですが、本作、情緒的には今一つというところ。しかし、まるで地球が小さくなったかのような現代と、マルコポーロ空港開港前に撮影された映画では、おのずと恋模様も距離感・スピード感が異なってくるのは道理であり、これはこれで楽しめました。なんと言っても大好きな原ちえこ先生が描くヴェネチアの風景は、実写とはまた異なるファンタジー的雰囲気も加わって、ロマンスの舞台として最高です。