悪人も可愛く見える(同情し辛いことを犯しましたが)。ましてやヒロインの相手となる人は、可愛いげありすぎ。見て楽しむ。更に、ヒロインに自らアプローチとは、企業トップなのにふんぞってないその物腰の柔らかさがいいじゃない、と好感抱かせる。
HQなのに、ピラピラしたコシの無い平べったい絵でなくて、人物に厚みがあり、ストーリーだけを並べているのではなく、見映えを大切にして黒白使いが気の遠くなるほど念入りに凝らされている。
この評価の最大の下げ材料は次のただ一点。この話は、事件でプツッと流れが切れる。
え?え?犯人のその後は?彼はどうやってそこまで?、などなど疑問だらけそのままに、ハピエンなんだからいいじゃないとばかりに次のステージに行ってる。
そういう作りのドラマ、見たことあるけれど、それはそれで後で語るシーンがついていた。
これはそれほどの事件直後についての説明を引きずらず、ひたすら輝く未来を見据えてリンゴーンと。あれはなんだったんだろう、その時の衝撃は蚊に刺されたくらいの大したことがないということなんだろうか、と拍子抜けだ。
夏よしみ先生は、華やかな絵柄で、服が凝っていて、他の先生と一線を画す作風で印象を残す作品を作られている。
白っぽいことがなく、丁寧に作っていることが明らかなため、よくひとこまひとこま立ち止まって眺め渡す。私はもともとサラサラ読むなんて、漫画読んでいるときには絶対あり得ないのだが、先生の作品はいろいろな意味でビジュアルが濃いので、安い感じがしないのだ。
本作の場合は、ストーリーに、上述のアレ?が結末まで山をいくつも越えた感無くて(あったはずなのに)、その事件の下地となった一件のほうも物語上は最後の最後まで決着したとは言いがたい。自称婚約者の彼女も退場は一纏めの顛末話についでに。
星5つと悩んだがそんなスカッ不足を飲み込めず、星はこの個数に。