社交界デビューものの面白さは、他のHQに、譲るとしよう。そこは本作は私には面倒くさい。晴れがましくなさ過ぎて、アイボが舞踏会に出てきているのを見て、寧ろ「華麗なるデビュー」の方を読みたくなってきた。あちらはHQに期待する甘美な感じが味わえるのに、こちらはジュリアの悪役ぶりがきっちり役目を果たして、登場人物の思惑が飛び交って、舞踏会なんて、当人達も目的意識もなくただ会場に行っただけ、そして読んでる私が、浮き立つような雰囲気を味わえない。彼らの本音外の心の声が分量多い。それも、「社交」ではあるだろうが。
この作品で悪党二大勢力の一つにして、ヒロインの頭痛の種ジュリア、現実にもいる、こんな人、男性にはわかんないのかな、というところが妙にリアル。はかなそうで外見可愛らしいのに、何故かキツイというか、うわべと中身が真反対のタイプ。なんであんな意地悪な人と?、という組み合わせの不思議カップルは世の中にときどきある。外見に騙されて毒には気づかぬ、異性を見る目の無さに驚かされるばかりで、端で見ていてつい臍を噛む思い、というのを経験している。
でも、当人がいいと思ってるのだから、止める権利なんてないなと、ましてや下手に悪口を言っても、結果として二人の間柄に変化無ければ、自分が悪者になっちゃう、言っただけ無駄に対立が生まれるだけになるのかなと、と言えなかったり。
自分が引導を渡すものじゃなくて、当人が自分で気づくべきもの、とも思ったり。これが、好きな人がその目に相手の本当の姿が見えてなくて、ということだったら、みすみす不幸な選択させたくない、とは、なるだろう。
アダムのお母さんという良き媒介者が1巻目ほど強く働かず、一方、どうしたんだろうと思っていた1巻目の元家庭教師が出てきたはいいが、他の波乱要因に何ら影響せず。
反発心のエスカレートは何度か視覚化されたが、今回二人の気持ちの高まりの方は個々に描かれながら、二人のショットで目撃した高まり感はビジュアルで確かめられなかった。
社交界デビューも、彼のダンス手ほどきシーンに、もう少し読者の期待を吸い上げる工夫がほしかった。
気の強さではライバルさんと変わりはない。
しっかり者と誉めるべきで、また、裏表の無いところがサッパリしている、と、そんなところを見てもらえて、良かったね、というお話。
星4個にしているが、3.5と思って欲しい。