軽妙なやり取りは二人の間も、ミリオネアクラブの間とも。
そして、HQのスクルージ氏ことヒロインのお相手ジャスティン、彼のキャラを盛立てる台詞に乗って、運命論的に、出逢いと命拾いと、その延長の人助け結婚が待っている。やけに生々しくリアルな悪夢を見せつけられ、正夢のような恐怖によりジャスティンが行動するところが物語では重要な舵取りを果たす。キャラ投影がうまい。
彼は出会った理由を、彼女と彼女が引き取って育てている子らを幸せにする解決策を提供することにあると考え使命感で動く。
キスシーン、長さと濃密さでストーリー中に育っている二人の愛がしのばれる。
しかし彼は簡単に愛を語るほど愛を熟知しているわけではない。
ヒロインが辿り着く心の言葉が心に響く。「愛されなきゃ愛する価値がないなんて何で思ったりしたんだろう。」
既にヒロインは、彼のしてくれたこと一つ一つの中に、甘い恋愛要素はなくとも、広い愛を受け取っている。
乞うるのでなく、与えるものだ、との原理原則が教訓臭くない。そばにいる限り精一杯愛そうと決意した頃、ジャスティンはヒロインへの愛情を自覚していた。
シリーズ三部作のなかで最も巧い場面場面の共感喚起。クスッとしながら次のコマへ次のコマへと進みコマ割りも工夫されていてベテラン芸。
黒白の使い方が好き。
こうなると、この2本目の抜群に手際の良いストーリーテリングと、1本目も相当良かったことを考えるにつけ、3本目って同じ作者の手にかかったのかなと思えてくる。
この作品、複数回の病院騒ぎ、当たりすぎなんじゃ?と、何となくそこだけご都合を感じるが、人は死を意識して初めて考えることもあるので、スクルージ的方向転換に理解は出来る。
ヒロインが人間としてかなりかわいいし、姉の遺児たちもとてもありそうな姿を活写されているので見守り気分をかきたてられる。しんみり、或いはほっこりさせられ、ジャスティンが巻き込まれている様子にはジャスティンという人間の善良な人間性が滲む。
ジャスティンの洞察力行動力自制心、どれも、彼のケチキャラの短所を大いに埋め合わせて男らしくて良かった。
ミリオネアクラブの仲間が互いを大切にするところの描写、今後もいい感じで付き合いが続くことを予感させて好印象。
注)スクルージ氏とは、C.ディケンズの小説「クリスマスキャロル」に出てくる強欲じいさんの名。