好きなひとに振り向いてほしい。その女心だけで勉強し行動し情報収集し、遂には個人秘書にまで。最も近い所にまで来れたわけです。並大抵ではないその涙ぐましさに心を打たれます。ただし、ここから先の道には別の険しさが。
そうしてやっとおそばにたどり着けても、下心を持つ女性からのアプローチを警戒するあまり、彼は極度にガードを固くしている。見破られてはこれまでの奮闘が水の泡となるため、ひたすら最悪の結末を恐れて、恋愛面アピールしない。彼女は伝えたい思いを伝えることが出来ないのです。ただ、働きぶりでアピール。耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍び、ひたすら彼のためになることだけ、黙々と。
過去の一時期と今現在も秘書をしてる私には絶対真似の出来ない事と判っているので(男性として見ている訳ではないのが最大理由としても)、そこだけでもう十分ヒロインの努力は報われてほしいものだと、心から思います。
夢に描いたって、実際には普通は出来ないことです。それをやり遂げるのが素晴らしいです。ずっと苦しい片想いを続けて、なお、どうしたら彼が無事に活躍して輝けるか、彼が成功するか、そのために頭も手足も使って全力サポート。自分の気持ちは秘めたまま、若さと美を封印して仕事に邁進。
彼は、ヒロインの外見にひかれるのではなく、まず信頼ありきで、一個の人間として、人そのものに気づいたときには心が傾き始め、いつしか彼女への愛情をはっきりと自覚するのです。女性の猛攻を切り捨てまくっていた鉄壁の彼の心の壁を崩せたのは、生身のヒロインの、要所要所で図らずもアピール出来ていた彼女の存在そのものでした。やっぱりそばにいるのは強いですね。
話は、あくまで話の世界のご都合展開かも知れなくても、献身と深い潜行愛の勝利、努力は裏切らなかった、という気持ちのいいサクセスストーリーに、可愛らしい女の子の長年の(初)恋が実ったのを見届けた嬉しさを味わえます。
一種ものすごい初恋成就で、裏目に出たらば時間返せの世界です。
蛇足ながら、従兄弟のやな奴とこれからは親戚という一点だけが、私にはヒロインが気の毒に思えています。結果としてキューピッドのはしくれではあったわけですが。
これももうひとつ蛇足ながら、タイトルの付け方に違和感。彼の恋愛ポリシーみたいなものなら解るのですが、「花婿」「誓い」の二語を繋ぐと、この作品の内容を表さなくなる気がします。
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