凄く個性があり私には得意な絵じゃないと感じながら、強く引っ張り込まれます。とても引かれ合うけれどすべてを預けるような状態になれない。そんな二人の、近づき合う、離れよう、去る、でもまた気持ちが戻る、といった因縁みたいなついたり離れたりの繋がりが、人間は感情で生きる生き物であると強く思わされます。同じドアをいったり来たりの中で、やはり互いに相手しかいなかった、そんな年月。二人の関係と、親の生き方と、芸術家としてのヒロインの生き方のなかに、このストーリーは重奏的にテーマを膨らませます。
傷つき遠ざかってもまた手繰り寄せてしまう二人の気持ち。思いきって片付けるには、次のステージへ進んでいくしか方法がない、ということですね。
二人は二人の日々を短い詩の創作をするように紡いでいきます。早く忘れた方がいいような悪夢で終わった方がよかったのか、それとも一歩踏み出したあとにはまさに泡沫の夢になってしまうのか。
圧倒される言葉選択の個性も、このお話の特別な光景を物語ってくれます。コマの並べ方や表されたもののセンスに、舞台がかった表現力が漂っています。
唯一惜しいのが、相手の男性の、顔が私の好みではないところ。男性の表情が変化に乏しいのも手伝って、読み手として、この男性に感情を寄せにくいのです。
ところがどっこい、で、あります。こういう男女の、互いに相手が自分にとり稀有な存在であることを認めるのがなかなかストレートにいかないという、そんなところを、心の内の読み取りにくい表情にこそ、余計に読み手は想像の余地を持てるのです。
とある形の恋愛ストーリーの目撃者として、このドラマ、大いに、もうやめようとしながら戻ってしまう気持ち、逃れられない関係性を楽しませていただきました。