スーツ姿が多いのもいいにはいいのだが、反面、城内で相好を崩せぬミスターパーフェクトなのだから、と納得しきれない。自分を本当に何とかしたいと思っていた、という思いは誰にでもある。この王子様、その「パーフェクト」が無理した仮面だったのなら、ヒロインと共にこれからを歩むのが真の王子様と。
なんだかわかったような、わからないような所で話が落着してしまう。ロマンスの成就と結びつけるのも説得力が感じられず。。
この構成で一冊堂々編まれると少し核心が弱いという気がする。
絵はヒロインにはかわいさ、王子様には男性としてはチャーミングなのに健全さも感じ取れる。
HQで高井先生の他作品に比較して絵が若い頃のような印象。人物が皆、顔立ちが幼く、描かれている様子には淡い恋心といった趣。
もっと大人の色気がある先生の作品を見てきたせいか、この作品からにじむどこか弾むようなキャッキャッとした空気感が、私の感覚的には恋に「憧れる」ストーリーで終わった。
余談ながら、とあるBL小説(書名に月が入る完全版)を見たとき、絵は高井先生だと直感し、目にする度ににきっとそうだと思っている。
そうしたフィールドではペンネーム使い分けされると思うが、そのクレジットにはお名前の一部があるので、余計妙に自信を強め、それを確かめに未読だったこの作品を読んだ。初期っぽさがプンプン試し読み段階でしていたが、絵柄の変遷を見るのは嫌いじゃないので。
イラスト担当とおぼしき小説何とかの月については何度も立ち読みで止まっているため(値段が高い)、小説の中の他のところにまだ他に挿し絵があったとしても、見れてはいない。その強いイラスト力が関心をそそるのだがー。
しかし、男性の絵に雰囲気を持たせられる先生は多くない。あの手の世界でよくある、まるで女のように美しいとか、華奢で妖艶、とか、可愛らしくてなつっこい愛嬌、とかというのではまるでない。
一個の男性として二人共にそれぞれ見目麗しい、という組合せで、魅力的な絵だ。
その感覚を、こちらになんとなく期待してしまっていた。それなのに、高井王子様ではなかった。洗練不足。
というか、王子様物でも、今なら、絵柄がよりイケる仕上がりになったのでは?、とコミカライズのタイミングがなんとも恨めしい。HQには早すぎた時期だったのだろう。