ヒーローアレックスは父親を見てきて同じ穴の狢と決め込み、それだけでなく父親からの影響を妹二人に波及しないように守る立場に自分を置いてきた。その甲斐あって妹たちは幸せな結婚生活を送っている事をこの上なく満足に見ているのが伺える。しかし、やっぱり自分は蚊帳の外。この疎外感が、自己嫌悪とその行動を助長していたのが伺える。気の毒な事。なまじ医者だからDNAに組み込まれている父の素行は、癖となって自分の中に組み込まれていると科学的にも自分自身で納得して思い込んでいるのだろうが、妹たちを守ってきたという自負に気付いていない。また、残念ながら、物語にはアレックスがヒロインジェニーに惹かれる根拠が希薄な印象がある。便利な妻(家政婦)カテゴリーでしかその価値観を置いて居ない気がするのだ。これは母親の影響だろう。自分自身を飾らないジェニー、それは彼にとっては珍獣。ではどこに惹かれた?デイジーはそこの理由にはならない。なぜならば姪がいるから。恐らくは、1人で何もかもを引き受けてきた強い男性として見せて、インフルエンザにかかり1人で今までだって立ち上がってきた自尊心を、看病してくれたという感動が、それらを覆しフォーリンラブに見せたいのだろうが、その感激は伝わってこない。うむ。総じてアレックスの苦悩が無いのだ。ウエスタリング兄妹物語を3作面白く読んだが、3作目はしこりが残ってしまった。