お医者様の世界は人の生死を目の当たりにする厳しい世界。物語の世界でさえ人が死ぬって悲しいのに、目の前の人の死が自分の医療技術で助けられなかったと思うことは、どれ程辛いか。
自分の無力さを感じてヒロインは、強い自責の念に取りつかれてしまい、自分を鞭打つようにして生きてきた。そして同じ医者として、助けられなかった命を思う気持ちを深く理解しているグレッグが急速に近い存在へ。
人の命を救う行為に頭が下がる。影の努力の成果
が医療技術に、反映されていく。日々の学びの姿勢が素晴らしくて、二人とも素晴らしい医者とわかる。
なにかで読んだが、事故現場などで患者に対して、全てが足りていない患者大多数の現場では、患者を分類する。「助けてあげられれば助かる命」「助けなくても助かる命」「助けたくても助からない命」。
時間との争いのなか、三つの内の一番目だけしか処置を施せない、それでも時間が足りないこともあるようだ。作品では「札」の立っている患者のことが出てくる。多分そのトリアージ後なのだろう。
そして、ジェブ。ひどいなぁと思う。しかし、現実にはそうしてやり場の無い怒りを八つ当たり的に出す人は多そうだと思う。助けてくれると思ったのに助けて「くれなかった」と。この一点張りで、激しく責める。
お医者様だって傷ついている、なんて風に顧みられない。
グレッグは良く見えてる。繊細な人はいいお医者様になれるが、より深く傷ついてきた、というのも良くわかる。ヒロイン、ジェブとの関係修復して良かったと思う。ただ、深く人と関わらないところ、わかるんだけれどもさみしい。人にわかりにくいところで傷ついている人。
そっと頭をハグするシーンが良かった。読んでいたらまさにそのアクションが自然だと感じた。
このストーリー、素晴らしすぎて、ロマンス比重やや下がる。傷付きたくない、それもわかる。
伝えなくちゃ、のヒロインの決心、流れのなかで何だか気高く感じた。
すんでのキス。ややベタだがいいいシーンだった。
ただ、繊細な気持ちを持つ人物たちが、大味に描かれていた気がする。正面顔と横顔、グレッグが同一人物に見えないときがあった。
ありきたりな結婚式シーンで締め括らなかったのも良い。高山先生の絵には時々受け入れがたい顔がある。そこは、私の好みから外れた絵だ。
99頁、グレッグの全身像のバランスがおかしい。