ヒロインの気持ちはよく分かる。
私が年頃の時代の日本もそうだった。男性側が家庭に入って欲しいとの考えだったり、仮に勤め続けること同意されても、双方の親が妨げた例が多かった。そもそも就職してもせいぜい結婚まで、ということで、それが最も理想的な生き方とされた。結婚しても働きたいとする職場の女性は、結婚式に上司は参列しないとの陰のルールがあった。そんな意地悪の裏で、自分の参列者側の体裁を欠いた結婚式が相手の門出をも挫く事になってしまってはならないと、職場の女性達は結局脱落(を余儀なく)していく。働くことに相手の「許可」も必要だったりして。男性にとり妻が働いていないことが当然とする考えがあり、僕の奥さんは働いていない、という言葉を、「自慢」に用いられて、聞いた私は人の幸せはそれぞれだと心で呟いたものだ。
もっとも、事前にそういう話をしていたら、このストーリーの別れのショックは激震とならなかったのだろう。
今も、夢があるのに、外に出られない女性が地球には沢山いることと思う。それを望むことはいけないことなのか。ほんの少し前に日本でも「仕事か家庭か」という、意味不明な議論が生きていた。不毛な二者択一の選択肢を求める人生観(女性の)が少子化の世にしたと思っている。
その意味で卵子提供はひとつの魅力的な方策だろう。
ヒロインの夢は医者になることであった。7年でいかにも中途半端に幕引きさせて、立ち上げた科の行く末にはどんなに心残りであったことか。
一面、HQに多いなんちゃってキャリアにもどこか被ってしまう。
お互い理解が進み、本作品の二人はさほど大きな衝突なく再会後の関係を結んでいく。その波乱の無さがイージーな物語進行に思えてしまう。
卵子提供、姉とのこと、母と義父など不安定要素が不活性、医者としてのヒロインに理解を示すシーンもあっけない。7年前に不十分であった、互いの育った環境から形成された考え方、つまり職業観や家庭観をなど話し合うことをもっと描写して欲しかった気がする。
何回もこの種の話は読んだ、という「飽き」を、上記要素の調合で新しさを加えてカバーして欲しかった。
3.8~4.0のつもりで。