外国物だからなのか、余命が、とか、思い残すことは、とか、そういうウジウジがなくてあっけらかん。さっぱりとして気持ちよーくストーリー進行。
でも、人生を共に出来ないなら、突き放すしかない、というところは本物の愛、思いやり。やっぱり遠くないうちいつか死ぬかも、というのは人をすくませる。明るい未来を描けなくて、徒に相手に、期待させるわけにいかない。自分も諦めるしかない未来の自分が、今の自分のそのままの延長を期待出来る訳もないのだから。
二人はなんとなく気になりながらぶつかり合って、それでも否が応でも段々心が近づき合ってしまって、とうとう互いへの関心がもう抑えられないところに来て、そして、そこまで来てから引き返すしかなくなってしまう行き止まりラブ。
彼がヒロインを邪険にあしらって遠ざけるのが男の精一杯の誠意なら、彼女は見返りを求めていない行為に走るという彼を気遣うが故の究極の献身。夢を追いかけていた彼女を知っているからこそ、それは何物にも変えられない価値を持つ。誰でもこんな事されたら泣くだろう、詐欺師でないなら。ヒロインは本気で救いたいと。彼にお金があるとは思っていないのだから。
彼女の行為が美しいので、これまでの一般的な経過を辿った恋路が一気に純粋な想いの結晶へと。本当は自分の事を気にいってくれてるんだよね?、と愛を確かめたはずだのにと思って、彼の真意を自分の納得の行くよう確認を求め、そして彼の去る気は本気と知るや、失恋で悲嘆に暮れる暗転へ転がる気持ちの落ち込みは相当だったはず。それをなけなしの貯金を、夢を叶えるための長年の軍資金を、彼のために出す、ヒロインの愛こそがこのストーリーの核心。
生きる気持ちも大切だから、彼女の陰ながらの励ましは百倍になって彼の力となった。
ここはHQ、愛って素晴らしい、というのを地で行くポジティブストーリー。
恋愛は軽い感じで、子どもや友達夫婦、雑貨屋の女主人、元妻、人の出入りも賑やかで、心臓云々の深刻さは薄まっている。それだけに、物語に、二人の愛の苦しさ切なさの場面はない。あるはずなのに、状況がそのはずなのに、そこを味わいたい欲は、読み手として叶えてもらえなかった。
牧場施設、家、病院など、分かりやすい背景と共に、コメディタッチの似合う明るさ溢れる人物の描線が、良くも悪くも彼の重い病を忘れさせる。彼ガースも大いに救われたことだろう。