上流階級で令嬢としてなに不自由なく育ち、というより、何も生活力を持つこと認められず育てられ、破産カウントダウン迄追い詰められたヒロイン。
「小賢しく」ならないよう、女は社会には口出ししないよう、など古い男の価値観で押さえつけられた育ち方をしたヒロイン。破産により全てを失うすんでのところ、窮状を知った彼が再び求婚。
結婚を申し出てくれた男性は何人かは居た。がしかし今さら浅ましい、などぐるぐる悩むというところ理解出来る。その中でもう一度来た、そこは大きい。しかも格別強い印象を残していた男性。
ヒロインは彼の妻として精一杯努力する。かわいい人間だと思う。彼女はいやいややったのではなくて、進んで入って馴染もうと、彼の懐に飛び込んだのだ。
しかし彼には、彼女が弱った所につけ込んだ、との負い目が拭えなかった。だから、妻を我が物にしようとしない。
彼が素晴らしいのは、落ちぶれそうになった所を救ってやったのだ、などといういやらしさが、毛頭無かったこと。
ヒロインの直感は本当に正しかった。彼は真に男らしいのだ。
入浴シーン、もう少し互いの相手には秘めた自分の心の内の真実を、こちら読み手がそのもどかしさを、感じ取れる所が欲しかった、
乗馬シーンも、ヒロインの心の高揚の描写が少し物足りなかった。
牧場らしい風景はもう少し見たかった。牧場の人たちももうひと働きするのであれば、多少は印象に残るビジュアルで出した方が盛り上がれた身がする。
二人の関係の焦れが好みでない人は楽しめないか知れないが、ヒロインを悩ませた問題が片付くまで、物語として、二人が清々しく向き合えない。負い目引け目経済的救済色を一旦解消させない限り、物語が目指すクリーンなハピエンに辿り着かないのだ。
晴れてフラットな状態の二人に戻して、その時にも相手を決めますか、という問いかけに一点の曇りのない結末、アメリカのストーリーだなぁとしみじみ。
ヒロインが彼にいろいろ正直なのがまた潔過ぎて素晴らしい。
彼は今、どんな気持ちなのかしら、というコマ、読めない顔のそのアングルがいい。