時々素敵に見えるドクターのために星は満点つけました。
傷心で前の職場を去ったヒロインがいつまでも新しい恋人を作れずにいることを、ご近所さんが心配してくれる。職場や町の中はいい関係です。
事故現場に救援活動に駆け付け、二人は素晴らしく息の合ったドクターとナースのコンビであることを確信します。信頼やリスペクトが通いあう関係へ。
二人が尻上がりに盛り上がっていく過程に、それまで自覚のなかった感情が急展開し始め、それを彼がブレーキかける場面があります。ここから、彼が殻を破るのに人の助けが出てくるのです。つまり、恋愛の成就にキューピッドが要るケース。
彼は、ブレーキをかけてしまった訳を語ります。
ストーリーはほぼ何から何まで外部に二人がそれぞれ気づかせてもらう仕立て。または、けしかけられる展開。
けれど、腹がすわったらカチッとはまる様な安定の二人に変わります。
屈折はヒロインだけに有ったことではなくて、二人が向き合うためには、彼もヒロインには見えなかったところをさらけ出して、そこから前に進められました。
きっかけ作りはやはりそこも、親代わりの善き隣人らの一計。
それにしても、登場人物其々、自分の領分をはみ出してこないというか、見事に役どころを果たしているのです。
そして、ヒロインを捨てた前彼の方が結構世の中に居るタイプでしょう。
自分が教授になりたいとか、医師として病院内での組織の中での社会的成功を納めたいとか、そんな野望で、立身出世に適した女性を選ぶ、最も身近にいて理解しあえて、いい仲だったりもしたような女性とは遊ぶだけの関係で、結婚と切り離す、そんなタイプのお医者様は少なくないとよく聞きます。
彼は苦しみを経て人の弱さのわかる医師として理想的な人物。そして救急の必要な困難な状況で力を発揮、出来る事をし尽くすヒューマンな医師。
こんな、ルックスがいい上に人間性豊かな男性が身近にいたら、自分の事を相手にしようがしまいが働く場所に感謝してしまうことでしょう。
100頁目の夜のキラキラ星に包まれた家の内部描写と、122頁目の朝(から昼にかけて)の外の日射しの眩しさとが好対称を成し、二人が迎えた転換点のようで良かった。