「秘密の取り引き」を同じ藍まりと先生のご担当で読んでいるが、ちょっと似てて読み比べになった。
結婚は無理だと思ってたヒロインという点が似ている。事業拡大の話の「秘密ー」と、建築事務所の事務方でつつましく生きてる「愛するー」と、生活環境が相異。「愛するー」の方が辛いかもしれない。生まれたときから親に憎まれるだなんて長すぎる。だが、年頃の時に似た悩みを打ち明けられたこと、私は一度ではない。文学作品で親から他の兄弟姉妹は可愛がられ主人公だけ虐げられる自伝的作品があるし、またごく身近に、もう一人子供が生まれたらそちらの方が可愛かったらそちらを可愛がるだなど、人間としてありえない暴言を吐いた人間を、私は知っている。実際居るのだ。そんな涙しか出ない話が世の中に。だからHQがいいのだけれど。
(親が実は愛してた、みたいなオチならさぞホッとするだろうが、)失格親は死ぬまで悔い改めることなく、ヒロインは自力で乗り越えてきた。且いい親ぶって腹立たしい。愛する「資格」がないのは誰か。愛される資格はあった。タイトルは意味深長だ。否定されて臆病になったヒロインのトラウマ克服の究極治療は、彼との素敵な一夜への塗り変えなら効果高い。成功。話に背骨が一本。親に愛されてないと思いたくない子の心の咄嗟の防御反応?、での錯誤が本当に痛ましい。愛されたかった娘の悲しい事件だった。
制作時間は充分か?。
雪、邸宅、洋服など絵は楽しめるが。
黒の入れ方はここでも豊かな感性を見せる。
ヒロイン視点の彼が主に描かれていたので、作者の策略にはまって、最も良き理解者であったと判るのは終盤。上手い。
友や友の家族にも見えていた、という救われる作り。
彼が結婚相手でホントに良かったなぁ、という気持ち。
しかし、ヒロイン15歳時点で彼は姉の婚約者の兄という間柄。一体何歳差なのだろう。
殊更必要以上に怒り罵倒しヒロインを大勢の前で貶めた父親の所業は絶対許されない。ただ、若さからの反発からとはいえ親に勢いづかせる材料を与えてしまったことは失敗だった。
彼は克服のため、大丈夫だと安心させ、リラックスさせ、素晴らしい初夜を体験させてくれた。
彼女の苦しみの記憶のリセット、解放の時と場に与え直してくれたのだ。責任感も手伝って。
トラウマ脱却、発端とも思っていた他でもないその彼によって解き放たれて、本当に最後の壁も越えて良かった。