読むのがつらいところもあったが、ストーリーは美しいし、ノルウェーの名所巡りも別の楽しみとなった。いつかオーロラを見に行きたいと思って去年私は、ノルウェー観光の説明を聞いておいたから、旅情を思い切りくすぐられてしまった。未定だけれど。
さてこの話は、優秀な企業内弁護士である従業員の遺留を図ろうとした場面からして既に、ヒロインは彼から高く評価されてる。日頃から信頼される仕事ぶりであるうえに、出張目的の案件の見事な成果も上げて、順風満帆。この状況、これを擲っても叶えたい夢にむかう気持ちなのか、と、読んでいるこちらももったいない気持ちはある。かなりの親が娘にはいまの道を歩き続けることを希望してしまうだろう。
その辞職願いの真の理由を会社の最高責任者のポジションにある人に伝えるのは、二人で街で過ごしていたとき。確かに流れが自然で、また二人の親密度が増していい感じだ。画家志望だからこその出張先の個人の家でのこと、観察眼、彼を描きたい気持ち、祖父母との交流など全て一貫性のある筋運びとなった。
彼の秘密、さびしい横顔の訳に胸を衝かれた。本書を手にしたことを後悔しそうになった。
だがヒロインの気持ち、彼の心境、こういうシチュエーションでないと究極現れ出ないものがある。この、私の苦手パターンも、ここはHQ、未来志向でちょうどよく締めてくれて、これなら応援と期待と祈りで読み終えられている。
彼ジェイクの裸身はセクシーだ。ただ、秘密を抱えているとはいえ、街のシーンに多彩な表情をもっと見たかった。欲張りか?