結婚できない人とわかっていて誘いに乗ることはできないと、シークは最後まで頑なに拒み通した。
いろいろ荒唐無稽過ぎな設定に感じるが、安易に落ちなかったシークの、相手や自身を先々まで考える姿勢には誠実さがよくにじんでいる。
シークのキャラがデレデレしておらず、その一貫性には、HQなのにガード鉄壁で圧倒される。ヒロインのボディーガードという役割そっちのけで。
ヒロインが学んだことは、沢山の蔵書の中でそれだけというのはある意味怖いくらいの驚き(何で家政婦に教えられる!?、というのも戸惑いの展開)であるが、同時に、ヒロインが一連の動きを始めたときの、最初で最後のチャンスに向かう女の一念には、敬意さえ抱いた。無理無理な相手の懐になんとか飛び込みたいと頑張る姿は、もう少し順序や過程の描写が欲しかった。何しろ、じわり自覚した恋愛感情が、彼の胸に飛び込みたいと思い詰めるところに発展するのだから。このチャンスを置いて他にないとばかりにぶつける一世一代の大舞台なのだから。
音楽云々や数々の物騒な命を脅かす事故など、二人の仲を盛り上げる要素さえ二人が結ばれることを助けてはくれない。始めに堅物ありき、なのだ。
無駄に守り守られの関係だけが入っているので、シークとイチャコラシーンが無さすぎて、私はHQの砂漠に迷い込んだよう、、。
最後のオアシスにたどり着かせてもらえるまで、作品ほぼ全編、敵もそれほど姿を見せるわけでもなく、紳士の社交クラブのメンバーがどうの、そのクラブのニューフェイスでもあるシークがその組織でどうという描写も、ニュース速報として語られる形で締めて終わる。そもそも、ニュースも、だから何?、の印象は拭えない。
シークの肌の色を描いていることはいいと思うが、その他は漠然とした異文化イメージで、なんちゃってシークに見えて仕方がない。
ヒロインも彼へのアタックを開始するまで子どもっぽいビジュアル。
なまめかしさなどそんな画面の蓄積からは厳しいのに、ベッドのテクニック蘊蓄や、性的な材料だけは言及、と来てる。
なんとなくバランスが練られていないと思えた。