トルコに「砂漠」?あったか?はて?妙だ。赤土では?。
星数は大いに迷った。
何代前かに縁のある土地と繋がりを象徴する品物とを手がかりに旅をして、そこで恋に落ちる、HQ得意なパターン。この骨組みのなかで、私の大好きなトルコが旅情を誘い、ゆきずりに終わるかもしれない恋にヒロインは身を投じる。
ヒロインは後悔したくなかったから、うたかたでも構わず、熱さに身を任せた。少女漫画「天赤」(篠原千絵先生)で芽生えた私のトルコ愛を再燃させられそうで手に取ったのに、光の採り方が何となく違うと思える気分が、陶酔の邪魔をしてくるような、なんともフクザツな気分を味わされた。
今は宗教色が全面に出すぎて暗黒に舞い戻り始め、世俗の混然とした輝きと潤いを失くし、かつての、エネルギーと落ち着きの共存した良さが色褪せてしまいつつあるあの国の、エキゾチズムが放つ魅力を、せめて絵の中に探しに入り込みたかった。
それなのに、話中に出現する物売りのおじいさんが胡散臭すぎて、読み手のこちら外国旅行でとかくに囚われ勝ちな警戒心が既にそこでMAXに。
騒ぎになってからのメイン二人の対面シーン。
助けてくれた善人として彼に対して抱く親近感と裏腹の、悪い人がいるなぁという、土地の人への不信感との対照が、彼の存在感を高める効果を狙ったものだとしても、冒頭で土地の印象を左右するようで残念。
それは置いておいてストーリーのレビューに入る。
彼のことを愛している身近な女性の存在と嫉妬心、品物が示すヒロインの先祖の数奇な人生の出来事などは、ベタ展開なので、よほどそっちはロマンチックにやってくれないと、幾つかの「どこかで見たことがある懐かしい感じ」「何だか知ってる気がする」的なエピソードはただの超常現象だし、それとは別に彼自身のエピソードがあるため、彼に語らせるのに何だかなぜ彼が語る気や見せる気になったかなどを示す心の動き描写などに余裕がなくなるしで、座りが悪い。
短いからこそ燃え上がったのかあれでは判然としないから、ストーリー自体が花火のような恋だった、完、で、ラブストーリーはひとつ区切れる感じ。
二人の愛が、それでも互いにもう離れられない程、強く長く続くものであることを、余り実感しにくかった。
砂漠の国、という題には読み終えてからも違和感が拭えない。
悩んだ末に、そこを加味、更に一ランク下げさせてもらうことにした。