船の操縦に夢中になった挙句、迷子になり、エンジントラブルという 運命の歯車が大きく動いたとき、アレッサンドラとリニエーリは一緒にいた。遭難中でも 一緒の時を長く過ごせる喜びに 両者ともに浸っていた場面は、とてもウットリと読んだ。リニエーリには、甥を可愛がる姿が微笑ましいほど 子を持てない現実に打ちひしがれていた事だろうと考えると、妹が出産することに力添えし 育児に親身に協力した背景の合点がいく(イタリア大富豪と小さな命 参照)アレッサンドラも姉に甘やかされていたことを 早くに自覚していれば、姉との比較にこうまで傷つかずにいられただろうにと、ため息は混じるが、人の成長過程であるから仕方ない。表題の「日陰」はアレッサンドラの自虐のように読めてしまう。作中、地震の規模や被害に嘘をついたデアが舌をペロッと出すシーンがあるが、私は1番のお気に入り!申し訳ないけれど、ヒロインよりも、根性入りまくりな姉デアのほうに感情移入してしまった。