舞台が中東で家庭教師なのに休憩中とはいえ過度の露出、そして何より異文化に合わせない欧米人の優越感とが見えた気がしていた。
読み進めても途中までは愛を語る青臭さが気になった。
しかし、しっかり描かれていることを王とヒロインが体現して、意外なほど白けないで楽しめるのだ。お定まりの、危機一髪と愛情確認場面周辺も、なんと彼らの心情が空回りしていない。
王の表情の終盤の変化も劇的に付けて、常軌を逸した帝王教育と愛を知らなかった設定がHQ的には有りのシークものに映り、良家の子女たるヒロインの、愛の自覚シーンが一方で入り込める乙女心設定となっていて、なかなか表現豊富。ある程度大人要素もあった。
薄着で腕も髪もアピールし過ぎな為に、薄っぺらな展開を予想していたのが、いい具合に裏切られた。
王(「プリンス」ではないと思うが?これはHQあるあるの、正当な称号分からない邦題の怪? ロイヤルっぽければ鷹揚に付けられる?)の、ビックリするくらいの猛々しさも背景の教育環境で説得力があり、ただの男性らしさの無駄なアピールとはならなかった。
HQにこれまた定番の彼の子どもとの関係も、初めは新鮮さを疑ったのだが、歴代家庭教師とは一味違うという描写に惹き付けられた。ところが生き物云々とは別にヒロインとその子との交流が意外なほど随分と密で、面白味や広がりを感じ取れた。そこで、帰ってきてね、の台詞は強いメッセージ力となったし、危機到来の関連に唐突感、不思議さは無くなった。
元同行者も、モブキャラだけでもなく、また、敵の存在もよく利用した筋運びでストーリーがバラバラになっていない。
シーク物の家庭教師もの、ありがちなレベルなのだろうと、たかをくくっていたのに、絵は1つ2つの分かりにくいコマを除いて、作品をより良く仕上げる意気を節々に充分感じさせる力作と判った。
皇太子は、でもそこで育てられるのか、小屋の「リノベ」は伝えられても、この話こそ「その後」の様子のほうは知りたかった。HQには、その後のラブラブも見たいというレビューをちょくちょく見かけ、その度に私は金太郎飴不要と思ってきたクチだが、この話ばかりは、プリンセスリナは共に暮らす様だから、男子であればどうだったか、HQは主題がロマンスだけれど燻る好奇心が残った。