ヒーロー ベン、ヒロイン ドーン それぞれの気持ちと 決意が痛く苦しいほどによく伝わって、タオルを頬から離せませんでした。特に ベンの彼女への配慮にある 思いのそれらは、言葉に尽くせません。この物語には、独りで生きるという事のエッセンスを幾つも含んでいて、それぞれの登場人物の決断や、行動、そして可能性を読むことが出来、それもまた考えさせられて面白く読みました。特に私が思いを馳せたのは、ベンの母。我が息子をも見限り捨てていこうとする悪女に書かれていますが、それでも彼女の言い分に それほどの嫌悪を抱きませんでした。自分の事しか考えない、でもそれは 自分の事をしっかり考えているという事で、先々を考えれば、老いていく母が いつまで不自由な息子を看ていられるか、いずれは自分も世話が必要になる その為の布石となるなら 良い事だと思えるし、恵まれた暮らしを経験した者にとって、それ以下を最初から選択肢に入れないのは 冷酷に見えても至極当然な事に思えるのです。そして息子の生活にも目処がたちそうだ、ならばと考える事にも 息子にとっても前向きになるきっかけになる と思えるのです。当然、身勝手な冷やかさに変わりはありませんが。8年。絶望の淵にあって再会を果たした2人に残っていたその炎は お互いの人間性に助けられて成就したのです。