親密になるまで彼は巧みに攻略したつもりだったが、脇が甘くて、アメリア研究材料の管理が悪かった。前半はヒロインの内なるものの解放の成功。これは若干の迷走をしながらも、その後も彼女の解放を維持。
本気であるほど、自分の心をオープンにしなければならない。確かにその通りで、彼にも解放が必要だった。しかしそれは、折っていた(逃げていた、絶っていた)ものに向き合うことも意味するので、最も触れたくなかったとてもナイーブな彼の人生の核心にかかわった。彼女には恥ずかしさがあったり、彼には過去の苦味を今晒す苦しみがあったり。
セリフの取り方に弾みがあってストーリー展開が楽しい。しかも周囲の人物像もクッキリ。
メイン二人の心が気持ちよく伝わる。そして、周囲からの、二人とのウォームハーティッドな関わり方もまたいい絆を見せて、物語全体が表情豊か。
切り取られてくるコマは、絵の一つ一つがその物語の断片を見せて鮮やか。ヒロインが彼に照れた顔の、彼が感じたであろうかわいらしさが表れている。随所で視覚的に語っていて、コミカライズの良さを出して来ていて良い。
そして、この邦題はお見事(翻訳者のセンスだろうが)。いや、原題もなかなかなのだが、漫画の構成から行けば邦題の伝わりかたはキレイ。
もう覗き見るのではなく、正面から。
しかも終わり方も言うことなし。始まりと終わりが技巧的にまとまりを見せて、本作はHQによくあるマンネリや結末の金太郎飴を脱却した。素晴らしい。
物語としての存在感を、絶妙な構成で、内気なヒロイン、抑圧を解かれたヒロイン、親密さを深める中での発覚、読み手に謎を持たせていた彼の内側、彼の解放、正面突破、いずれもそれこそピースが嵌まるように配分されて、最後まで面白かった。
勢い有り余って、そこで始めちゃう?、という箇所もあり、「ボディートーク」お盛んな頃もある。それでもカラリと描かれる高山先生なので、軽妙さで物語のうねりを損ねなかった。内容があれこれ詰まっているのに、うるささがなく、寧ろ互いにとって本当に大きい相手だとよく分かる。
この頁数で流石というほかない。