失敗経験が彼を怯ませる。これは仕方ないことなのではないか。誰しも失敗で学習してしまう。次もそうなるのかも、と、人は学んでしまうのだ。慎重な性格に更に輪がかかった彼とは対照的に、今のままでは良くないと、じり貧避けたい弟クンは現状打破志向。
狭い中で出来過ぎのご都合展開で、 双方のそれぞれの世間の、相対的近さ狭さに、唖然。
そこは百歩譲っても、弟クンは軽率。結果良ければ、でなく、これは老舗の存亡の危機になりかねない。
二人がひっそりと暖めてきた相手への思い。その想いを字面と絵でチロチロ出してきて見つめさせられて、胸がチクンとする。やはり恋愛感情を表現するときに、こちらが揺さぶられるかは超重要だ。それをさちみ先生作品ではちゃんと味わえる。
両片思い系の話は、読み手には双方それぞれの想いを手の内として作り手が見せてくれてる事が多く、これもそのテなので、読み手には、早く打ち明ければいいのに、との二人へのもどかしさをクライマックスまで、引っ張る引っ張る!
このムズキュンタイプのロマンスは、いつどうやって伝え合う事になるのか、が見所だが、やっと伝える気になったか、の転換点は外野の方の功績が、この作品では大きい。彼の義妹のけしかけぶりにクスッとさせられるが、訳あり登場だったことを考えると、もう少し二人の自力解決の方が私は良かった。
作品は作り手の表現物、いかなる人物造形もストーリー展開も読み手は一介の受け取り手、これはこちらに早く行っちゃえばいいのに、との気持ちを高ぶらせて高ぶらせてやっと彼が遂に事を成し遂げる(告るだけだけどね)、いわば人工的便秘が開通したみたいな構造を楽しむお話。
それを苛つく人は面白がれないかと。
「人生は時に/望まずとも/変わらざるを/得ないことが/起きるものよ。」正に!
笑いを取る呟きはあるし、あれこれ可笑しいのだけれど、やはり泣かされるところはしっかり泣いた。
イーサンと弟クン、どちらも性格が素敵で人が良すぎて却って心配。しっかり者との組合せが、良くできてる。
冒険を好まない割には買収はやるんだ?、とのちょっとした違和感はある。有機的成長のみで企業経営はやっていけない時代ではあろうけれど、味を守るほうのスタンスでいる彼が、違う味を売る企業を買ってこれからをどうするつもりだったのか?
当初4星、読み直して二度目も新鮮に感動したので上方調整。