良かった。街で出会った婦人のビジュアルが、頭と胴体、足のバランスと、顔の作りに違和感があったが、彼女の言葉はヒロインのみならず、挫けかけて捨てばちになった心持ちでいる人間一般を、揺さぶる力があったと思う。
そして彼の愛が、精一杯ディに寄り添う気持ちが、揺るぎなくていい。
ダンスしかなかったダンサーが、そのダンスを通じて手にしたものを、ダンサー生命の終わりにその全てまでを終わりにしようとする。
ヒロインの心に沁み渡っていく二人の言葉には、人に出会う事の尊さがたくさんある。
また一方、トゲある言葉も、入って来てしまう。世の中暖かい人ばかりではない現実。
それでも、その後の人生に希望も感じさせてくれる。ヒロインの資質を見抜いていて、その進路へ全面サポートを惜しまないであろう彼が素晴らしい。
初めて長岡先生のマンガを読んだと思う。ヘレン・ブルックス氏の原作もメインが台詞劇なのかどうか知らないが(HQノベルは、まず読むことがない)、丁度よい分量の言葉だったように思う。もし長岡先生が、セリフ劇に変えたのだとしたら、綺麗に捌いていること感服。
試し読みでは、描線がちょっと煩く感じてた。しかしダンス関連のコマに汗や熱、激しさなど感じることができ、回想の提示の仕方が巧みだった。
男性、女性、出会った街の人いずれも私の好みでは全くない絵なのだが、HQコミックの、小さなドラマが当人には大きい人生のエポックメーキングであることを、よくとらえて、ドラマチックに見せてくれたと思う。
直前に「神様からの処方箋」(キャロル・マリネッリ/岸田黎子)を読んでいたから、読み比べとなり余計楽しめた。ただ、元の話が違う訳だし、決して優劣で見ていない。