アーミッシュがモデルと思われるが、その特殊な閉鎖社会を出たいとするヒロインの設定であるため、典型的居住地域を出さないでフィクション性を打ち出しているようだ。却ってそれが、狭いコミュニティで馴染まない人間の生き辛さを普遍的に炙り出す格好になり、特殊性で絞り込む題材が、人間社会での同調圧力にもがいている人間に寄り添い語るかの形。
信条や主義は個人のもの、しかし生まれ落ちた土地と家族に決定的にリンクし、異議異論の類を持つことは異端児として、残酷な扱いを招くことが多いのが現実。域外には許容されることであっても。
変わり者を許さない社会は、地球上どこにもあるから、これは、例えば皆何々するもの、かくあるべし、等の理想など、標準を強制する不毛を突く深遠なメッセージ性を、この極端設定を通じ、誰にも安息の地があるよと、伝えているように感じた。
人間のオークション物は、私は好きではないので、如何に「特異な」集団の驚愕の行為であることにしていても、また、センセーショナルな冒頭で読者の注目を集めたいだけの意図ありきであっても、低いところから私は評価を始めてしまう。だが彼の台詞は序盤の黒さを塗り替える。「君の人生は君のものなんだ」、小社会だけのルールが全てではない。
しかし白井先生が、危なっかしくも純粋、そして彼の関心を惹き付けずにはおれない容姿など、納得のヒロインの絵を繰り出すので、変わり便宜結婚型に話が収斂していく。耳目を集めるかの作為的序盤から、いつものHQ定番へ寄せられ、世間知らずのお嬢様が下界に下りたのと本質変わらなくなっていく。
彼はあくまでこの結婚は本物ではない、本物にさせない強固な意志をアピール。でも、男性だから、そこ踏みとどまるのは大変。ヒロインは天然魔性ならぬ巧まざるアタックで揺さぶる揺さぶる。
読み手のこちらも、がんばれ、と思ってしまう。
HQって、相手が愛を語ってくれない、というのが多いが、こういうヒロインのようにぶつかってみるのが気持ちがいい。
彼女は努力してる。学んで、適応するよう、日々過ごして、かわいいと思う。真の意味での夫婦になれず苦しむ。
彼は空しい抵抗をどこまで?というのがこのテのストーリーの肝だろうと思うが、降参の仕方が、私にはドラマ不足に感じた。
嫉妬心のシーンはベテランの白井先生で手堅い。
調教シーンは観念的でピンと来なかった。
誤字はやめて。