本当にアリスン先生が殆どを描いたのだろうか? 他の HQで先生がコミカライズをご担当された素晴らしかった絵は、本作では見られなかった。角度、塗りかた、描いているものの選び方にアッと思わせるものを、先生の作品で見てきたものだ。
男性の方はアリスン先生「らしさ」があった。本作も多彩な描き分けが見事。同時に、他の作品で幼顔が気になっていたヒロインの顔は、お年頃に見える見た目が多かった(除116頁)。
しかし、もっと丁寧な感じがするのが先生のコミックと思う。制作に時間を十分かけられなかったのだろうか。
人物のシーンが粗さを感じる。ラストのほうの伯爵の顔の崩し具合は私には受け入れがたい。
レビューアーのチョビこさんに完全同意。そんな参考にせずに読んだつもりが、読後の感想は自分でもビックリするくらい一致した。
進行もブチッとしており、各シーンの挟まれ方に荒さを感じる。
シルヴィア・アンドルー先生の原作にストーリーの広がりやスケールがあったのだろうが、個々のエピソードは印象的でも、二人のそのときどきのドラマをもう少し心情面での描写で視覚的に味わいたかったのに、「実は」というところのタメが物足りなくて、数奇なヒロインの人生の2年の恐怖と辛さのリカバリー力不足。
エリアーヌ達との交流も唐突に思ってしまった。実家のことも、ヒロインが、私が帰ったら、と言っている割に尻切れトンボ感。ひどい目に遭ってきたことを示すのも削れないとするなら、穴の場面の冗長感と彼の従妹の場面の交流の時間不足感、私には重さ反対に思えた。
ヒロインがあっさり描かれている印象で、主役の重量を持っていない感じしてしまう。
2度ある入浴シーンも少し中途半端。対比か、少し関係の違いを感じさせてくれてもいいし、多少男女を意識付けするなら、より思わせ振りな空気を表してくれてもいいし。
兎に角、二人の心境の推移を視覚で味わいたかった。
目には目を、歯には歯を、の宗教を連想させる、イブラヒム医師の箴言、かの教義は報復を推奨していないとされ、事実ストーリー中、伯爵は代償は払うことになる(多くはない)。
ただそれでも私には、義父への天罰は欲しかった、との思いが残る。
追記:2回3回と読む内に、面白い描き方を再認識するコマ散見、そんな挑戦がいいと思った。船の絵も素晴らしい。
追追記:3日間で6回は読んだ。その引きの強さに1ノッチ上げ4星へ変更。