狼はイヌ科でありながら人にはなつかないという。ニホンオオカミは絶えてしまったけれど、五大湖の狼達のほうは野生で生き続け、やはり人間社会と交わり合えず。他国でも、狼というのは、似た経過を辿ってしまいそうになってるというのか。他のレビューでも触れたと思うが、ジャック・ロンドン著「野性の呼び声」を小学生の時に読んで以来この種の話には心引かれる。
ロマンスは普通。彼の動物生態学者の側面がストーリーを味付けしている点が、少し変わっている。胃袋を掴むという、最も伝統的な正攻法で彼が陥落。ヒロインにはその意図も無かったが、狼の縁はその後も続く。
町の人たちを遠巻きに立ち回った彼ら言うところの「修羅場」の噛ませ方、少々物足りなかった。
二人の感情が寄せ合っていく場面、私はもう少し熱量が欲しかった。絵に男と女のムードよりも、狼の保護仲間的「同士」の親しみの方をより感じてしまう。ヒロインの行動は愛に溢れているんだけれども。
彼の話した狼の愛はエロティックで良かった。
不心得者の狼に対する違法行為はもちろん、元婚約者の行動も一歩間違えば不当行為だろう。ヒロインのバイト先での物語序盤の1件含め、このストーリー、軽く済んだからいいものの、あわやちょっとした事件になりそうだったことばかり。
狼が生息している土地という以前に、本当に危険なことはなんだったか、とは思う。
彼の好意がほほえましいくらいに自然な展開、アプローチにいやらしい手練れ感無く、プレイボーイひしめくHQ界では武骨め。これで、顔がいいという設定がもしもなかったら、もっとロマンス成分を上げなければ、ロマンスストーリーの名分は立ちにくい。
行動力あり、論理的な弁も立ち、環境行政面への実績・成果を買われての職移動(環境保護局から国立公園部への)と、彼の優秀さが、ヒロインのこれまでの周囲に居た凡庸な男たちを遥かに凌いで気持ちいい。