虚構には虚構に見合ったリアリティーを添えないとしっくりしないことがある。史実に創作を加えたとしても、読み手が気持ちを入れ込める、白けさせられない程度の騙され方をしたい。本作は、人間の出会いや絡み具合にお話臭さが透けてしまう感じがする。大がかりなスケールに出来る水槽の中、敢えて狭い水域で大量だけどとても遍在している酸素を求めたみたいに、展開の窮屈さが少し不自然な感じ。
絵は状況描写がいい。
人物の顔は向きを変えたとき少し微妙な気がするとき有り。
ヘンダーソンが脇役のポジションとしては余りに役割大きく、重要性から見てもっと報われていたら、と思った。
ロマンスは足りなくはないが、盛り込まれた、「その他」要素を欲張っているので、相対的に薄まった。 HQ の時代物としての限界ではなく、切り取り方、焦点の散漫に課題があるとみえる。
英仏の国家間対立を題材に入れているが、皮相的な一方的な取り扱われ方。なのに、諜報活動、クリプタナリシスも、戦場もその救援も、更には遺産を巡る陰謀に殺人未遂と、こなしきっていない。
各種場面描写や貴族の絵の雰囲気がよいのでそこを汲んでの上方調整で4星。
蛇足--「功績を称えられ男爵に叙せられ」、って、既に「英国貴族」だったリチャードの爵位は 一体どうなるのか、説明が欲しい。