日本でいったら江戸時代(化政)、イギリスの階級社会というのは貴族とそうでない者との間の格差が相当だったと想像する。家庭教師は、元は良家の子女が、「生活のために働いて」労働の対価を得る「低い」階層に置かれてしまうという、人生の流転的な背景を否が応でも思わせる職業。そうした扱われ方に、なんとも悲哀を感じさせる人物像を設定する物語は 、HQに限らず、割と見かける。名前にレディを付けて呼ばれる人間であるかないかの隔たり。
そこからのプロセスは形としてはシンデレラなのかもしれないが、タイトルにシンデレラが入るのが多すぎるところに、HQ のネーミングセンスの残念さも感じている。
読者にシンデレラストーリー物が好きなのを意識してるからかもしれない。
もうひとつオリジナルを思い起こされる事が活用されているのは、目先ちょっと変わっていて、演出を盛り上げた。
横顔が時々正面顔と同一人物感が薄い絵があった。
あっさりの線が少し、あともう少し、キラキラ欲しい気がしたのだが、この感じが村田先生の絵なのだ、とも感じた。
HQらしく、途中はあれこれあっても、結局うまく行っちゃう、安心安定の1冊。
疲れた心にそっとロマンス成分で一服、落ち着く。
でも、ストーリー中の時間を考えると、大変な境遇になってからが余りに長く、逆に、ヒロインが行動を起こしてからが反対に目まぐるしく、ヒロインの行動ありきで始まるストーリー故ではあるものの、多少不自然な感じはある。
特に弁護士サンの動きが、ブランク期間の行動説明としては、私は説得された感じはしなかった。使用人が屋敷内に居て味方だったのだから尚更である。
こんなに味方が居る、という心強さは、世の中捨てたもんじゃない、と読み手のこちらにも伝わる温かみのある設定だが、レディ・アンズリーのような話の筋を方向付けする存在の出番のタイミングに、一層の作り物っぽさが。
降りかかるいろいろな事故事件が詰め込み感無しに入っていて、結末迄継接ぎ感無く気持ち良く読める。
そこに伯爵様の恋愛要素絡みは二人の間に漂う空気を濃くはしきれず、周りの動きあっての当人達、二人のロマンスは自力部分がかなり低く、主体的な行動による展開が好きな私はその運任せぶりに少し肩透かしの気分も。
87~88頁泣く場面は分断感あり。
職業斡旋所の存在が、物語進行に効いていて、一枚新しいカードになっていて良かった。