好きなのに、好きだから、やめよう…。
相手の幸せのために身を引く格好でつれなくする。相手は混乱する。心残りから完璧に思い切ることもできずに、冷たい態度をとり続けられない、相手は期待したり悲しんだり振り回されるだけ。
こういう行ったり来たりの揺れる男心が、そのまんま、ヒロインを翻弄させる。
お友だちであるはずならば余計とても許されない嘘をつく、自分可愛さで周りが見えていない「お友だち」。
でも、現実に友人に利用されて幹事(女2男2」を共に引き受け、知らず私が何もしない人間に仕立て上げられて出し抜かれたりなどされた、友人顔して平然と傷つけられた過去ある私には、こうした妙なリアリティが胸に響く。私なら、友人不信は一生になるが、このストーリーはちゃんと勧善懲悪。前非を心から悔いて、しっかり姿勢を正してくれて、いいなぁと思う。
女は男が絡むと信じられないことを仕出かす、口から出任せを言う、ちょっと手のつけられない人間に成り果てるのがいるから、マッケンジーの妹は、人間として最低の行動を取ったけれど、あ~いるいるわかる、という感じだ。
冷静さを失って独りよがりで、しでかした「お友だち」と彼のヒロインに対する過ちは、ヒロインには心だけでなく、町を愛した自分の存在をも拒絶された最大致死量の劇薬効果を与えた訳だから、辛さはいかばかりだったろう。
最後はよかったね、となるまでの、修復のアイテムと、マッケンジー妹の心からの反省が、心憎いまで読後感を満足させる。その場限りではなく妹は心を100%入れ換えたんだろう、というような念の入った顛末。そこまでストーリーが触れること自体、ラブストーリー以上に、同郷の幼馴染みや友情との人間関係のひとつの解決を見届けた感が読み終えると晴れやかに染み込んでくるのだ。
彼は怒るとひどく怒るという、話の前触れとしては存在価値あるひとこまがさりげにある。クライマックス、彼にその引き金に手をかけたのたかとハラハラもしたが、そこはHQ、意地悪にあとを引かせずホッとした。
あとがきで、製作姿勢と背景に触れられてそれも良かった。
HQコミックに携わる最初の作品から、藍先生は、白黒のコントラストの巧い、絵が魅力的なの作家さんだったと、改めて感服。