『王と妃』、『桃殿の姫~』、『かんなり草紙』、『ひいらぎ草紙』などを読んで、期待して此の本を読んでみました。
出だしは面白かったものの、太子妃候補をもてなす宴の開催が決まった辺りから、其れ迄おくびにも出していなかった周銀花の太子殿下陸叡季に対する好意が突然のように現れてきて驚きました。銀花の叡季に対する態度から薄々察してはいたものの、急に自覚をして胸が痛んで苦しくなるというのが、余りにも話の筋を無理やりに持って往こうとしているようで白けてしまいました。
銀花は、幼少期より大人の気を引こうとして暴れていたり、自棄に成ったり、愛嬌が無かったりと大いに性格に難がある娘でした。其れが年頃になったからと言って性格が佳い娘になるとは思えませんし、何故叡季が銀花の何処を気に入って好きになるのかがわかりません。実際に、初めて会った叡委の向こう脛を思い切り蹴っています。一番痛い処を痛めつけるという性根の悪さを思い切り露呈しています。銀花に歌うことを教えてくれた乳母が少しは性格を矯正する役目を担ってくれたかもしれませんが、無理矢理に素的な娘に創り上げた感じがしています。イラストの絵は余り美しい娘には見えませんが、恐らく見目は佳い娘なのでしょう。
陸叡季が、「俺」という一人称で話すのも、太子という立場にあるものとしては異様に感じます。主人公達の人物像が不明瞭で、物語全体をつまらないものにしています。
レビューを書くために、一度目に読み飛ばしてしまった箇所を落ち着いて読もうとしましたが、物語自体に興味を失ってしまったので、途中で読むのを止めました。物語を書き上げた後、一度読者目線で読み込んで貰いたいと思っています。作者は自作ですから思い入れがあるかもしれませんが、果たして、価格に見合う価値があるかどうかを再確認して貰いたいものです。