最初に読んだときは、身売りやら転売やらとあって、ヒロインは着物ばかり着ているし、なのに携帯電話がでてくるし・・で、とっちらかっている作品と思っていました。
でも、この作家さんのファンなので、もう一度読んでみたら、つくづく面白い作品でした。
二人のセリフの応酬のなかで、微妙に純情な二人の心情やそのときの心境などを書き込まれていて、それがかなりユーモラスで、これはコメディでもあるのかな・・と思いました。なかなか闇のありそうな脇役の黒田秘書と溝口社長とのやりとりが、それまでの二人の関係も分かるような、楽しいもので、やはりこの作家さんは、一見どうしようもなさそうなストーリーを書きながら、十分に読み応えのある作品に仕上げる方なのだと思っています。
物語の途中にヒーローside の章があったり、終盤でヒーローside の諸事情が明かされて謎がわかるものも多いですが、私は、セリフの合間合間に、心境などが短く的確に書かれている、この方の文章のほうが断然好きです。