自分は登山経験というものはほぼないに等しく、1000mもない山を1回登らされた事があるぐらいなのですが、一応登りきったとはいえ体力のない自分にはかなりキツかった記憶があります。そういう人間が居る一方で、8848mもある世界最高峰のエベレストに登る人も居る。しかも、冬季に無酸素で単独で…というのがこの小説です。こちらの小説自体はもちろんフィクションですが、冬季にエベレスト登頂を果たしているクライマーが現実に存在するのも事実。この小説を読んだ後だと、信じられない気持ちと、ただただ凄いなぁと思う気持ちがない交ぜになりました。
小説内にて、実在したイギリスの登山家のジョージ・マロリーの最期に触れられているのも興味深いところ。この小説の初版は1997年で、2年後の1999年にマロリーの遺体が発見されていますが、登頂を果たしていたのかどうかについては未だに結論が出ていないため、この『神々の山嶺』でマロリーがどういった最期を迎えたのか、“確めてみる”のも楽しみの1つと言えると思います。ちなみに、著者の山岳短篇集の『呼ぶ山』はこの『神々の山嶺』のスピンオフ作品となっているため、『神々の山嶺』を読了後に読んでみる事をおすすめします。