高校の同級生だった草と麦、名前も、突き詰めない考え方も似ている2人が、大人になってから再会するところから始まります。2人の共通の友人の金子が醸し出す、大雑把でいることのデリカシーさがすごく好きです。文の組み立て方、言葉選び、人物造形、どれをとっても一流の人だと感じます。苦しさや生き辛さは誰もがある程度もっているものですが、それらとどう折り合いをつけて生きてきたかを匂わせる草の言葉の数々に、麦と一緒に惹きつけられました。危なっかしいところで安定している草の魅力にやられます。女性の書き方もうまくて、金子の彼女も兄嫁もすてきです。ひとつひとつのエピソードがきらめいていて、生きるってそんなに悪くないかも、とラストで草のセリフにリンクして感じました。