ネタバレ・感想あり海と毒薬(新潮文庫)のレビュー

(5.0) 4件
(5)
4件
(4)
0件
(3)
0件
(2)
0件
(1)
0件
鈍い問い
ネタバレ
2026年4月19日
このレビューはネタバレを含みます▼ 戦争という極限状態のなかで、人はどこまで「自分の判断」を保てるのか――本作はその問いを逃げ場のないかたちで突きつけてくる

扱われる題材は重いが、語り口は驚くほど平明で、気づけば倫理の揺らぎの只中へと引き込まれている‥
恐ろしいのは特異な誰かではなく、ごく普通の人間が状況に溶かされていく過程そのもの
善悪の基準が外側に委ねられたとき、良心はどれほど脆く変質するのかがじわりと浮かび上がる

読み終えたあとに残るのは単純な嫌悪ではなく、「では自分はどうか」という鈍い問い
短さに反して思索の余韻は深く、心に長く居座る一冊
いいね
0件
実話
2026年4月30日
戦時中に実際に起きた生体実験事件について書かれた小説です。カトリック教徒である遠藤周作らしく、罪の意識をテーマにしています。重いし暗いし、読んでいて苦しい小説ですが、それでも読む価値は高いです。
いいね
0件
名作。
2023年3月21日
戦時中の残虐な人体実験。それに関わった人は、なぜ実行したのか、前後どう生きているのか、罪の意識とは。目を背けたくなる現実とどう向き合うのか、向き合えるのか、向き合わないのか。短いけれども、読むのに覚悟のいる、人間の核心に迫る作品。
続編「悲しみの歌」と併せて読んでほしい
2025年7月27日
かつて九州大学医学部で行われた、アメリカ人捕虜の生体解剖事件を題材にした作品。軍部の思惑や医学部内の権力争い、そして「自分を押し流す運命のようなもの」に流されるまま、生体解剖に関わった人々。そしてその「取り返しのつかなさ」に気づいた時にはもう遅いのだ…。この作品の存在を初めて知った10代の頃から、このタイトルの意味を折に触れては考えている。海に垂らした毒が、どんなに薄まってもその存在を無いものにはできないように、どんなに長い時が経過しても過去の罪は(風化はしても)消えないということだろうか。「海と毒薬」とは、「時の経過と、過去に犯した罪」と同じ意味なのかもしれない。この事件のその後を描いた続編「悲しみの歌」を読んでから、特にそう思えてならない。
レビューをシェアしよう!
作家名: 遠藤周作
出版社: 新潮社