ネタバレ・感想あり海と毒薬(新潮文庫)のレビュー

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続編「悲しみの歌」と併せて読んでほしい
2025年7月27日
かつて九州大学医学部で行われた、アメリカ人捕虜の生体解剖事件を題材にした作品。軍部の思惑や医学部内の権力争い、そして「自分を押し流す運命のようなもの」に流されるまま、生体解剖に関わった人々。そしてその「取り返しのつかなさ」に気づいた時にはもう遅いのだ…。この作品の存在を初めて知った10代の頃から、このタイトルの意味を折に触れては考えている。海に垂らした毒が、どんなに薄まってもその存在を無いものにはできないように、どんなに長い時が経過しても過去の罪は(風化はしても)消えないということだろうか。「海と毒薬」とは、「時の経過と、過去に犯した罪」と同じ意味なのかもしれない。この事件のその後を描いた続編「悲しみの歌」を読んでから、特にそう思えてならない。
名作。
2023年3月21日
戦時中の残虐な人体実験。それに関わった人は、なぜ実行したのか、前後どう生きているのか、罪の意識とは。目を背けたくなる現実とどう向き合うのか、向き合えるのか、向き合わないのか。短いけれども、読むのに覚悟のいる、人間の核心に迫る作品。
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作家名: 遠藤周作
出版社: 新潮社