ネタバレ・感想あり一夜妻になれたらのレビュー

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夢一夜もしくは一夜限りの夢の如く
ネタバレ
2026年9月2日
このレビューはネタバレを含みます▼ この小説は、黒崎あつし先生が2012年に書き上げたものです。
その頃には、「一夜妻」などという古風な言葉が生きていたのでしょう。
今ではこの題名に心惹かれる人はまずいないでしょう。
万人受けする題名を考えるのは難しいと思います。
それも、相当の年数に亘(わた)って生き残り色褪せない題名となると、時代を読む先見の明が必要になります。
発行された当時はそれなりに読まれたと思います。
今も、高星麻子先生の表紙絵が綺麗なので惹かれて、何人かの人は読んだはずです。
さて、今までに一度も人を恋したことがなかった近江佑樹は、初めて会った十和田繁之を見て一目惚れをしますが、自分では全く自覚していません。
自分で自分が思い通りにならなくて制御できないという初めての経験に戸惑います。
何故この様な状態になるのか解らないのですが、漸くこれが人を恋するということだと気付きます。
そして、思い切って潔く、十和田を誘うのですが、あえなく断られてしまいます。
本当は、十和田は佑樹の願いを聞き入れたいのです。
けれども、五百川から佑樹には手を出してはいけないと釘をさされているので、断わらざるを得ないのです。
それでも、佑樹は思い直して最初に十和田を紹介してくれた五百川(いおかわ)経由で十和田に連絡を取ったりします。
佑樹は、大学生の時に病死した母にも、物心ついた時から家には帰って来ない父にも慈しんで貰った記憶はありません。
それでも、自分で自らを善い人に育ててきました。
だから、自分の財産を目当てに頼ってきた異母弟を見捨てようとはしません。
そういう佑樹の思い遣りの心が、十和田や五百川の心を打ち、義弟の更生への道が拓(ひら)けます。
物語には書かれていませんが、義弟の一連の不行跡は、両親の知るところになったはずです。
義弟の母親も父親も、今回のことで、色々と思い知ったでしょう。
子どもが如何にして道を踏み外すようになるかということを。
十和田の庭師の祖父と雇い主の先代との間の秘められた想いを私たちはそれとなく知らされます。
結婚して子を生すことを強いられた時代が少し前まではありました。
今の時代に生きる人は結婚することを強いられないだけでも幸せです。
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