このレビューはネタバレを含みます▼
主人公の小旋風(しょうせんぷう)は、その神出鬼没さと鮮やかな立ち廻りから、小旋風(つむじかぜ)と驚異の思いを込めて呼ばれるようになりました。
彼は、義父から強制されて王侯貴族の墳墓を盗掘し、陪葬品を売り捌(さば)く稼業に従事していました。
けれども、逃れられない危険極まる稼業の中で、十年近くも生き延びてきたのは、彼の持って生まれた動物並みの勘の良さと経験と技術と体力の所以でしょう。
最後の盗掘品となった五弦を元手に、己の頭脳とその明晰な頭脳から次々と生み出していく巧みな甘言によって、見事な世渡りをしていきます。
そして、道連れとなって、危機一髪の時を何度も助けてくれた楽人の涓涓(けんけん)と共に、世の流れを変えて往くような素晴らしい働きをするのです。
彼は、自分と関わった人や恩ある人を決して見捨てません。
どうにかして助けようと謀(はかりごと)を巧みに巡らして往きます。
そういう心映えがあるからこそ、彼に絆(ほだ)されて、彼を手助けしようと画策してくれる人が次々と現れるのでしょう。
私たちは、登場人物たちがどの様な容貌をしているのかを目で知ることはできません。
ですから、彼らについて書かれている言葉から、自分で想像しながら読み進めていくしかありません。
そうして、自分だけの中華国物語絵巻を創る楽しさを心ゆくまで味わうのです。