主人公の小塚利翔(こづかりしょう)を二年前に公園で見掛けた佐光匡英(さこうまさひで)でした。
恐らくその時にも利翔のことは鮮烈な印象に残ったのでしょうけれど、その後に続いた出来事によって、彼の存在は深く心に刻まれることになったのでしょう。
本文中に書かれてはいませんが、この二年間の間に、恐らく空き時間には自分自身で利翔の動向を探り、時間の余裕がない時には人を使って利翔の日常を把握していたのでしょう。
そうでなければ、どうして、利翔が困った状況に陥った処に上手く出くわすことができたのでしょう?
偶然とか縁があったとかいうものではないです。
例え利翔の生活範囲が新宿に限られていたとしても、偶然に出逢うことはほぼ考えられません。
実際に、現場で利翔が二人にやられているのを近くで視ていたのです。
そうして、利翔がどのように立ち回るか観察していたのでしょう。
その後、利翔の懐に入り込んで上手く懐くように仕向けて行ったのです。
利翔の生い立ちを見れば解りますが、彼にとって女性は利用はしても恋愛の対象には少しもなっていません。
身近に男性の手本となるような父親や教師等が居なかった為か見た目も中身も優れた男性に対する憧れを人一倍持っています。
それで、初めて出会って突然に身近な存在になった佐光に惹かれることになったのでしょう。
仕事の面では非常に習うべきことが多い佐光ですが、反面日常生活は維持管理能力が欠損しているのも愛嬌があっていいのかもしれません。
寧ろ、日常生活は利翔の方が色々と秀でています。
利翔は、これから様々なことを学んで魅力のある出来る男になっていくのでしょう。
佐光にとっても利翔は育て甲斐がある漢だと思います。
今後公私ともに離れがたい存在になっていくのだろうと思われます。