非常に興味深い本でした。昆虫を中心とした自然写真家の筆者が、震災後1年間のフィールドワークを元に、地震・津波による生態系への影響をまとめたレポートです。できるだけ私情を入れずに淡々と書かれていますが、トンボを筆頭に昆虫類への深い愛情が感じられます。きっかけは震災による津波が原因だけど、地域での種の絶滅に至った大元には人間社会の活動域の拡大による、動植物の生息域である湿地、砂浜の分断がある事、その上で震災後の急速な復旧作業に伴いさらに生態系の多様性が失われてしまうであろう事への物悲しい気持ちもあるけれど、かと言って希少な種の保全のために復旧の手を緩めろなんて言えない訳で非常に難しい心情も綴られています。膨大なフィールドワークを元にした知見と、昆虫などの美しい写真が素晴らしい本でした。