中学歴史の教科書で「白河の清きに魚も棲みかねてもとの濁りの田沼恋しき」と言う狂歌で寛政の改革を学んだ世代として、徳川十一代将軍家斉の晩年に賄賂政治が蔓延し、天保の飢饉に無為無策だった訳だと思った。
この小説は家斉が二十四男斉省(なりやす)の養子先、川越藩主松平大和守斉典(なりつね)の為に石高の良い庄内藩への国替を企んだことに対して、庄内藩の武士達と農民達とが、其々の方法で幕府に抵抗する話である。
詳述するとネタバレに成るので書かないが、家斉が松平定信を老中に据えた前半の善政と、定信を失ってからの後半の腐敗政治の実態がよく見て取れる。