就職活動であがく若者たちの物語でしたが、身近にいそうだなと思える人達がたくさん出てきたのと、SNS時代の若者の心情描写がリアルに描かれていると思いました。何でもかんでもSNSで発信したがる承認欲求の強さ、何も成し遂げていないのにいっちょ前に批判したがる癖、SNS上の発言内容に酔って本来自分のやるべきことをおろそかにしてしまう愚かさ。相手の問題や欠点を指摘して悦に浸っている人ほど、自分の中に同じ問題があることに気づいていないんですよね。何かを達成したから凄いとか特別に認められている存在になれるとかそんなことは無くて、内定をもらったって本当はそこからがスタート。「何者かになろう」とする人ほど、「何者にもなれない」という現実が浮き彫りになる。泥臭く頑張っている人を見て笑う人ほど、自分が泥にまみれることを恐れている。結局シンプルに「自分はどうなのか、どうしたいのか」っていうことだけなのに、大層なことを言ったり考えたりしてしまう痛い感じが、よく表現されていました。作者の洞察力、観察眼の鋭さが光る作品だと思います。