読んでいくうちに誰かに見られているような恐怖を覚えます。
田舎ならではの衆人環視状態の環境、みんなが何となくお隣さんの素性を知っているような、壁を隔てていてもお互いの考えがわかっているような居心地の悪さがじわじわ押し寄せてきます。
ボラードとは、何かを繋ぎ止めておく装置だそうですが、主人公は何を繋ぎ止めたいんだろう。
歪な親子関係か、上辺だけの付き合いのクラスメイトとの友情か。津波の爪痕が残る町での暮らしか。
保護観察対象とされる主人公家族のやり取りは、過干渉の母が発達に躓きが見られる娘に怒鳴り、強制するしか手段がなく、行き場がないようにも感じられます。しかし終盤に母の目的が知ることとなると、今までの描写への印象が一変します。
読み返してみると誰が悪者で誰が偽善者か、敵か味方か分からなくなり、人間とはいろいろな面をもつおそろい存在だと感じさせられます。
津波に遭った町の、「あるべき姿」を押し付けられて生きる息苦しさは、そのまま現代を生きる私たちの焦燥感にもつながります。