これまで少しずつ垣間見られた不思議が次第に魔力の存在という意味付けでその存在を増していく。
この第二部では、ごく一部の登場人物の中にある悪の感情をも書かれており、思惑の交錯など話はますます広がりを示す。
マインの活動半径の拡大は、彼女の力へのニーズもあり、貴族社会に確実に踏み込んでいくことになる。その過程で種々の巻き込まれから逃れることは出来なくなっているのである。
巧みに登場人物各人の立ち位置からの物語を紡ぐことで話の見え方が変わることは、第一部でも短編的な形で差し挟まれて面白さを膨らませてきたが、この第二部はその短編の集合体のバラエティもあって、一見バラバラな人々が実はこの話で当人たちが感じている以上に関係が深いことが判るようになっている。そのばらし方が変に思わせぶりに仰々しい間を持たせることなくさらりとグッドタイミングであって、しかもそのやり方ならば話のスピード感に読み手のストレスもないため、次を読ませる推進力が却って高まってくる感じ。
先を読むのが楽しい、という心地よさをもたらしていると思う。
神殿長、神官長、ベンノ、と役者の配置が効いている。特に、前半ベンノ、後半神殿長。
マインは家族にも大いに恵まれたけれど、ルッツの外にベンノにはどれほど助かったか。ラッキー過ぎる。
そして神官長、ヒーローポジション?
ともかく、なんと心強い人なのか。
面白そうだと思っていたが、大長編に怖じ気づいて手を出さないでいた。第一部合本版値下げに飛びついてから、第二部へ躊躇無く進み、もうこれから第三部に行けるのが楽しみで仕方がない。
歯切れの良い文体でもたもた表現がほぼ無い分、頁をめくるのがあっという間で、それは逆に惜しい気持ちも抱いているところだ。
一点、私は母乳で育児したが母乳の場合はゲップ不要だった。エーファのシーンでの描写に、そんなこともあるのかな、と。
短い文章故だからか、句点無しで繋がれる語順上、動作主とその対象の関係に2度見が要ることがある。また、89パーセントのところで、「二人が仲良くするには云々」が構図的に判りにくかったし、会話の主体を文脈や話し言葉の癖や用法で人物の区別をさせるため、会話の読「後」に判らせるのがたまに億劫にはなる。大したロスではなくこの書の個性とも感じるが、独特の擬態語等が入る位なら、少し親切に足してくれても、という気持ちもある。