ネタバレ・感想あり最後の帝国海軍 軍令部総長の証言のレビュー

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新 豊田副武像
ネタバレ
2020年5月29日
このレビューはネタバレを含みます▼ 今日、豊田副武大将に対する評価は批判的なものが多いような気がする。しかし戦前の彼の評価は現在とは全く異なりものであり、辛口で知られる井上成美大将でさえ彼を絶賛していたという(戦後は罵倒していたそうだが)。若手士官にも人気があり、黛治夫大佐は戦後に「豊田さんは数理的思考の持ち主で、太平洋戦争開戦当初からあの人が連合艦隊司令長官をやっていたならば、もっと合理的でまともな戦になったのでは無いか。」と語っている。このような逸話から、私は豊田副武氏の人物像に興味を持ちこの本を購読した。

本の内容は豊田氏本人が語ったことがまとめられている。そのため読む際は、豊田氏の自己弁護の可能性も考えられるので、鵜呑みにしないよう留意する必要があるかもしれない。

また、私は読み進めて行く中である矛盾を感じた。氏は冒頭で自分の特質として、物事を素直を意見するということを挙げていた。しかし話が進んでいくと、艦政本部長としての立場では─と言ったり、連合艦隊長官としての立場では─などと言って自分の立場を気にして、本心とは異なる発言をしていた。自分でズバズバものを言うタイプだと言っておきながら、作中では全くそのような様子が見られなかった。

ただ、共感する点も多くあり、古賀峯一大将殉職後の戦況の中、彼が連合艦隊長官に就任したことは不運としか言いようがない。あの状況で誰が指揮を取っても結果は変わらない。豊田副武大将を愚将と決めつけるのは不当な評価であると思う。

近年、武田勝頼や今川義元が再評価されているように、豊田副武大将に対しても適正な批評がされればと思う。
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