BL小説というものがあることを知って、書店で初めて購入したのが此の本でした。暫くは何度も読み返すほど気に入っていたのですが、今は手元にありません。
何故だろうと思いましたが、他の人もレビューで指摘していた通りで、市井史佳の自分を表す自称が「俺」であることに違和感を感じました。自分に自信がない青年が「俺」を使うのは非常に不自然です。「僕」か「私」を私用と公用で分けて話すような人物だと思われます。彼の人物設定に相応しくないので、非常に違和感を感じてしまって、朝比奈が何故史佳を気に入ってしまうのか不思議でなりません。
恐らくそういう違和感が次々と積み重なって他の工夫して考えただろう全体を毀してしまうのだろうと思います。ちょっとした亀裂や綻びを甘く考えていると取り返しがつかなくなるといういい見本です。
此の小説家の本は此の本以外に読んでいないのは、無意識のうちに避けていたのだと今になって分かりました。高峰顕先生のイラストは素的でしたので、とても残念でなりません。