ネタバレ・感想あり死神憑きの浮世堂のレビュー

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〖人形〗〖死神〗。思いもよらぬ話の筋
ネタバレ
2024年3月4日
このレビューはネタバレを含みます▼ 『一寸の虫にも五分の魂』という言葉がある。総ての生きとし生けるものに魂が、命が宿っていると、私達は日本人は考えてきた。
そして、命を失うということは、其の生体から魂が抜け出ると考えられた。
生きているものは生きるための活力を水や食べ物から得る。しかし、死んだ瞬間から其の活力を得られなくなった生き物は時と共に朽ち果てるのが道理だ。
此の物語では一度死んだ人間が別の人間の魂を奪って生き返る設定になっている。生き返るまでの永い間、生前のような見た目を保つための仕組みが今一つ解らない。そして、生き返ったのちも生前の記憶を残しているという其の盛大な仕組みも尚更解らない。此れについては、腑に落ちないままで読み進めないといけないのだろう。
主人公の人形修理工房【浮世堂】の主、城戸利市は性根が真っすぐで善良な人間である。悲惨な目に遭っても苦境に陥っても何時も最善な道を選んで生きていくことができる、魂の綺麗な人間なのだろう。友人の僧、愚浄は其れを見抜いているから、彼の苦境に駆け付けることができるのだと考えられる。【骸屋】のぬいも邪悪な家業には相応しくない人間である。そして、利市に四度助けられる。其のうちの三度は命だ。因縁の相手に助けられた命は自分からは決して捨ててはいけないことになった。
二話目に出てくる蘇りし者、伊武冬馬は導かれるようにして、愚浄や城戸利市に出会う。また、ぬいにも会う。偶然ではなく必然のようにして、最善の解決法を選ぶようにして物事が進んで往く。此れは、城戸利市の強い意思による功績が大きいと考えられる。
物語の最後に、伊武冬馬は大好きだった友人の後悔と哀しみを拭い去ることができ、彼をあの世へと見送ることになる。
色々と疑問を持ちながら読んだ此の物語であったが、最後は涙なしでは読めなかった。けれども、荒唐無稽で血生臭い物語は余り好みではない。愚浄が緩衝材のような役目を果たしたし、城戸利市の人間味に惹かれたので、読後感がそれ程悪くないのは此の二人故だと思う。
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