戸田は最悪のタイミングで里見の前に貌を出す。大学時代から里見を気に入っていたのなら、十一年も経ってから現れるなと言いたい。結婚して子どもができる前に現れて誘ってくれたなら、不幸な人間を何人も創らずに済んだはずだ。
里見の窮地に乗じて断れないように危うい橋を渡らせる其の巧妙な手口には里見など到底適うはずがない。吊り橋効果のように危機的状況に陥るたびに段々と頭脳が冴え渡ってくる里美。戸田と水の中を潜り抜けて往きついた先はもう後戻りできない世界。水は性的な欲求や関係をこの場合は表している。
人の道を踏み外す里見の行き着く先は何処だろう。
思い直せよ、里見。人でなしになる前に。